続モラトリアム期

日常の出来事など

原付を買った

原付を買った。前回の一人暮らしの話ではないけど、家から連れ出してくれる何かが欲しかったのが始まりで、生活に刺激が欲しかった。車ほどではないけどバイクがあればと思っていた時に、アニメ『スーパーカブ』を見てしまった。それからバイクの事ばかりをネットで調べるようになり、YouTubeからはバイクの動画を勧められるようになって、それから流れるように原付を契約した。原付を選んだ理由は一番免許を安く早く取れるからだ。
 
買ったのはズーマーという原付で、前面には丸目のライトが2つ付いていて、パイプのようなフレームが特徴的だ。タイヤが大きいせいか、近くで見ると思ったよりも存在感がある。幅広いシートの下にはスケボーを入れるためのスペースがあるけど、買う人のほとんどがスケボーを入れることはないだろう。この空洞もデザインの一部で、見た目の独特さに貢献しているところだと思う。一応コンビニの袋を掛けられるフックが付いていて、弁当を運ぶことはできた。でも他のスクーターに比べると機能性はかなり低い。購入理由の半分は風変わりなこの見た目で、残りの半分は自分の好きな『仮面ライダー龍騎』の主人公が劇中で乗っていたことにある。自分の好きな作品に登場している。これ以上の付加価値があるだろうか。自分がズーマーに乗る時にヘルメットにゴーグルを付けて、斜め掛けのバックを使っているのは完全に『龍騎』に影響されているからだ。別に城戸真司(主人公)になりきりたいわけではなく、ズーマーに乗るならこの格好しかあり得ないと思ってた。何回も見返している作品だからこれは仕方ない。
 
完全に余談だけどズーマーには燃料計の代わりに燃料ランプが付いていて、ガソリンが1Lを切ると点滅してガソスタにはよ行けよと催促してくる。にも関わらず龍騎の最終回では真司はズーマーをガス欠させてしまう。1Lを切ってからランプが点灯すると言っても、リッター40キロは走るのでガス欠させるほうが難しい。今まで何気なく見ていたシーンだけど、同じ車両に乗る事で作品により深く浸かることができて感動した。完全に余談。
 
 

 

ズーマーは都内のバイク屋で購入した。県内ではあまり良い条件のものが見つからなかった。この時はまだ免許を取っていなく、今振り返るとかなり生き急ぎすぎていた。運転したことが無い人間が買うのはどうかとは思ったけど、誰かに買われる前に買いたかった。バイク屋の人が言うには免許を取る前に買いに来る人はそこそこいるらしい。
 
自宅は埼玉の端にあって、原付初心者(になる予定)だから車体は配送してもらうつもりが、気づいたら契約書の持ち帰りの欄にチェックが付いていた。相当な距離でないと配送の選択肢が出てこないバイク屋だった。これで契約完了です!納車を楽しみにしてくださいね!の段階でそれに気づいた。聞けばこの距離を走ればある程度は慣れるとのことだった。
 
原付というか二輪は免許取得時に道路での講習がない。つまり納車された日に初めて公道を走ることになる。車の免許も取っていないから正真正銘の人生初公道だ。それが東京から埼玉までの距離70キロのツーリングになるのは不安しかなかった。納車日に廃車になったら笑えない。最悪人に接触するかもしれない。ただ運転すれば慣れるのは確かにそうで、配送費を浮かせることもできる。ということで納車日に運転して帰ることになった。後日、原付の筆記試験に合格して、その後の運転講座ではカーブをミスって車体を転倒させた。他の受講者から白い目線を浴び、これで公道を走れるのかとより一層不安になった。
 
納車日が人生最後の日になる可能性もあったので、フリーターの友達に付いてきてもらった。フリーターの彼曰く、走行することに恐怖する人間の姿を見るのは「ウマ娘を走らせるみたいで楽しい」らしい。対岸の家事ほど面白いものはないので分からなくはないがとにかく緊張していた。納車前には不具合がないかを確かめるためにバイク屋の周りを一周した。平日の午後ということもあり、人も車にも会わずに走り抜けた。不具合などは特になく無事に納車を終えた。
 
そのまま直帰するつもりでいたけど、友人からの提案で人通りの少ない路地裏で走行の練習した。ズーマーの太いタイヤの安定感のおかげで免許を取った時よりも上手く走ることができ、今までの変な緊張感もなくすことができた。運転の楽しさを感じられた瞬間でもあった。それからは運転したくて堪らなくなり、友人と分かれた後は地元に向かって走り出した。22歳にもなって書くのも恥ずかしいけど、初の公道運転はすごく自由になれた気がした。初めて運転したときにどこまでも行けるのではないかと思う感覚もすごく分かる。地元に帰る道中でさいたまスーパーアリーナに寄った。SSA仮面ライダーのロケ地として有名で、『龍騎』の作中にもズーマーが周りの道を走るシーンがある。同じ原付で同じ道を走りたかったけど、オリンピックの関係で通行止めになっていた。残念。他にも道草を食っていたせいで時間はかかったけど無事に自宅に帰れた。

 

納車から2週間が経ち、まだ右折には慣れないけど原付がある生活には慣れた。カスタム用のパーツを探すようになり、確実に生活に侵食してきている。パーツどころか他のバイクも探している。原付では幹線道路の流れに乗れない。走る道を選ばないといけない。それが他のバイクを探している理由ではあるが、制限速度30キロの道ではギリギリ人権が与えれるので増車という方向性で考えている。
 
原付に乗りたい欲のおかげで外に出る機会も増え、停滞していた生活の刺激にもなっている。長距離の移動には向いていないが、街中や近隣の市に行くのには十分だと思う。国道沿いに集中している爆弾ハンバーグにも容易に行けるようになったのは大きい。少し前までバイクに興味がなく、人生で乗ることは無いと思っていた。ただ実際に今乗っているわけで、過去の自分というのはあてにならないと実感させられる。実は某疫病のせいでライフスタイルが変わる前から生活に刺激が欲しいと思っていて、遂にようやく正解に辿り着いた気がする。「いのちをだいじに」して二輪ライフを楽しんでいきたい。